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私は外国人? (将棋とチェス)

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【このブログは、過去の記事を含めて、より分かりやすくするために常時、推敲しています。】
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www.chesshouse.com より引用 】

この投稿を読まれた方に、「お前は日本人か!?」と責められるかもしれません。今晩、NHKの「クローズアップ現代」で、私が尊敬する元名人の米長邦雄さんがコンピューターの将棋プログラムに敗れたことを紹介していました。初めて知りました。

番組の内容は別段、どうということはありません。ただ、番組内でちょっとだけ触れていた「将棋とチェスとの比較」の話に、異論があります。

私は日本生まれで日本育ちの純粋な日本人でありながら、将棋のルールより、先にチェスのルールを覚えた、という風変わりな過去を持っています。さらに、大学の卒業論文でコンピューターの「チェス・プログラム」を造ったという風変わりな経歴も持っています。

ちなみに、私は日本で最初のコンピューターどうしのチェス対戦で勝った側のプログラムの作者です。当時は「パソコン」という言葉さえなかった時代だったので、現在なら笑える話でしょうが、大型コンピューターを使ってのチェス対戦でした。その対戦内容を卒論のテーマにしたのです。

こうした背景から、今晩の「クローズアップ現代」の内容は実にスラスラと理解できました。しかし、上に書いた通り、番組内の「将棋とチェスとの比較」の話の部分だけ、ちょっと異論があります。滑稽にも感じています。

NHKの番組は、日本人が日本人向けに作るので「日本人に心地よい内容」になるのは当然です。今晩の番組に限りませんが、従来、いろいろなところで見聞きしてきた「将棋とチェスとの比較」は、いつも同じです。

将棋の盤面が「9X9」で、チェスの盤面の「8X8」より多く、しかも、将棋では敵駒を使えるので、ある局面で指し得る手の種類の数が圧倒的に多い、という論調です。

従って、将棋の5手先の局面の数のバリエーションは、チェスのそれに比較して圧倒的に多い、という論調です。ですから、チェスに比較して、将棋というゲームは「宇宙」のように広大だ、と結論付けます。

つまり、「暗に言いたいこと」は、「将棋はチェスより高度で奥深いゲームだ」という点です。転じて、日本文化は高度で尊敬に値する、と言いたいのでしょう。

私も日本人なので、その心理は分かりますし、そう思いたいです。誰でも自己の文化に誇りを持ちたいのは自然なことだからです。

日本では将棋というゲームが主流で、日本を除く残りの世界ではチェスが主流です。これを喩えると、少し極端ですが、日本ではマラソンが主流で、世界では100メートル走が主流という状況になぞらえることができるかもしれません。

「チェスより将棋(日本文化)が高度だ」という主張は、私には「マラソンは、100メートル走より高度だ」と誇っているように聞こえます。「マラソンの42キロに比べれば、100メートル走など、子供の遊び」という論調に聞こえます。実際、日本では「将棋に比較すれば、チェスは子供の遊び」と誤解されています。

マラソンに比べて、100メートル走という競技が本当に子供の遊びだとするならば、マラソンの選手が100メートル走に出場した場合、楽勝できるかどうかと言えば、結果は皆様のご推察の通りです。

チェスでも全く同じです。日本人が誇りに思う将棋というゲームで天才である羽生さんは、チェスを趣味としています。それでは、日本人が「子供の遊び」だと思っているチェス界で羽生さんは楽勝できるのでしょうか。将棋人口に比べれば、チェス人口が限りなくゼロに近い日本国内ならそう言えるかもしれません。

しかし、残念ながら、世界レベルでは、チェスを本業にしない限り、そう簡単ではないでしょう。我らが天才、羽生さんは大局観を持っていますから、全く「井の中の蛙」ではありません。チェスを通じて世界を覗き見て、ちゃんと「世界の壁の高さ」を痛いほどよく知っています。

小さな島国の「井」の中で、いくら「天才」ともてはやされても、世界という「大海」ではそう簡単ではないことを、聡明な羽生さんご自身は、とっくに自覚されています。

羽生さんのチェスでの世界ランキング2800位近辺(本日時点で)だからです。羽生さんにとってチェスは本業ではなく趣味にすぎないという点を加味しても、やはり、この羽生さんの世界ランキングからは、将棋の天才なら、子供の遊びのチェスには楽勝とは言えないでしょう。

もっとも、逆も真なりで、もし、チェスの世界チャンピオンに将棋のルールを教えて、4~5年、将棋を勉強したとしても、羽生さんには全く歯が立たないでしょう。

とは言っても、羽生さんは、本業ではない、単なる趣味に過ぎないチェスでフランス・チャンピオンと引き分けたことがあります。ですから、やはり、羽生さんは怪物並の天才であることは間違いないでしょう。万一、趣味にすぎないチェスを今から本業にすれば、世界のトップレベルに近づけると私は確信しています。

ちなみに、2000年10月にイスタンブールで行なわれたチェスのオリンピックで、日本男子チームの順位は、126カ国中88位でした。日本より順位が上位の国々の中には、国名さえ聞いたことがないような国がたくさんありました。世界のチェス界での日本のランキングに関し、チェスを「子供の遊び」とみなす頼もしい将棋ファンの方々の応援を頼みたいところです。

チェスを子供の遊びと感じる将棋プレイヤーの皆さん、是非、皆さんの大人の腕力で世界中の子供並の幼稚なチェス・プレイヤーをねじ伏せてギャフンと言わせてみせてください。

日本の伝統文化である将棋を大切にしつつも、チェスという世界標準語も覚えてください。日本語を大切にしつつも英語を覚えるようにです。

そして、もし、「日本人の頭脳は優秀」などということを本気で信じているなら、是非、世界標準語のチェスを覚えて世界に殴り込みをかけて、それを証明してみせてください。将棋ではできないことです。国連の中で、いくら日本語で叫んでも誰にも聞いてもらえないのと同じでしょう。

ところで、米長さん、コンピューターに負けたからと言って、落ち込む必要など全くありません。自動車が発明され、42キロを走る競争で人間が車に負けたようなものです。マラソンランナーとしての人間の価値が下がったわけでは全くありません。

「自動車って便利だなぁ~」と思っていればそれでよいのです。むきになって、「今度こそは!」などと、プライドをかけて機械との競争を続ける必要なんかありません。人間は機械をこき使い、夜になったら機械には真似できない晩酌でもやりながら「思考の揺らぎ」などを楽しんでいればそれでいいのです。

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by robocop307 | 2012-02-08 21:53 | チェス  

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