ペットの殺処分
【 メールは → こちら 】
【 藤沢晃治の公式サイトは → こちら 】
【 メルマガ申込みは → こちら 】

熊本市動物愛護センターがペットの殺処分ゼロを目指す活動をしていたようです。その様子を描いた本を紹介します。
片野ゆかさんの著作で集英社から刊行されている『ゼロ』という本です。
以下、青字部分は、『ゼロ』のP.278からの引用です。
事務所に戻って所長の松崎に報告すると、すぐに処分の実施が決定した。どの犬を選ぶかについては、職員全員の投票で決めた。
強い噛み癖がある犬やフィラリア検査で強陽性の結果が出ている犬、保護したときの健康診断で注射針や医療器具に激しく興奮した犬など五頭が選ばれた。
最終確認が行なわれたとき、職員から疑問や反対意見が出ることはなかった。ここで働く者にとっては、いずれも意外な結果ではない。
毎日、世話をしていれば、犬の性格や性質、個性、癖は自ずと見えてくる。しかし、同時に、職員にとって愛着のある犬でもある。気持ちの上で整理をつけることは簡単なことではない。
翌日、殺処分が行なわれることになった。処置室にまもなく一頭の犬が連れてこられた。医療器具の準備をしていた後藤は、その様子を見て言葉を失った。
久し振りに複数の職員の注目を浴びているのが嬉しいのだろうか、犬は尻尾を左右に大きく振ってはしゃいでいた。噛み癖などの問題を抱えているが、のべつまくなしに攻撃行動に出るタイプではない。
精神状態が落ち着いているときは、人と一緒にいるのが好きなごく普通の犬なのだ。後藤が近づくと犬は安心しきった顔で、注射器を持つ手をペロペロと舐め続けた。目が合うと、さらに嬉しそうに尻尾を振った。
崩れそうな気持ちをなんとか持ちこたえることができたのは、獣医師としての仕事をまっとうしなければという思いがあったからだ。
しかし、処置室を出ると、怒りや悔しさ、無力感、その他言葉にならない、いくつもの思いが一気に押し寄せてきた。自分はあの犬のために何もできんかった・・・。
そう思うと後藤は、涙が止まらなかった。
【 藤沢晃治の公式サイトは → こちら 】
【 メルマガ申込みは → こちら 】

片野ゆかさんの著作で集英社から刊行されている『ゼロ』という本です。
以下、青字部分は、『ゼロ』のP.278からの引用です。
事務所に戻って所長の松崎に報告すると、すぐに処分の実施が決定した。どの犬を選ぶかについては、職員全員の投票で決めた。
強い噛み癖がある犬やフィラリア検査で強陽性の結果が出ている犬、保護したときの健康診断で注射針や医療器具に激しく興奮した犬など五頭が選ばれた。
最終確認が行なわれたとき、職員から疑問や反対意見が出ることはなかった。ここで働く者にとっては、いずれも意外な結果ではない。
毎日、世話をしていれば、犬の性格や性質、個性、癖は自ずと見えてくる。しかし、同時に、職員にとって愛着のある犬でもある。気持ちの上で整理をつけることは簡単なことではない。
翌日、殺処分が行なわれることになった。処置室にまもなく一頭の犬が連れてこられた。医療器具の準備をしていた後藤は、その様子を見て言葉を失った。
久し振りに複数の職員の注目を浴びているのが嬉しいのだろうか、犬は尻尾を左右に大きく振ってはしゃいでいた。噛み癖などの問題を抱えているが、のべつまくなしに攻撃行動に出るタイプではない。
精神状態が落ち着いているときは、人と一緒にいるのが好きなごく普通の犬なのだ。後藤が近づくと犬は安心しきった顔で、注射器を持つ手をペロペロと舐め続けた。目が合うと、さらに嬉しそうに尻尾を振った。
崩れそうな気持ちをなんとか持ちこたえることができたのは、獣医師としての仕事をまっとうしなければという思いがあったからだ。
しかし、処置室を出ると、怒りや悔しさ、無力感、その他言葉にならない、いくつもの思いが一気に押し寄せてきた。自分はあの犬のために何もできんかった・・・。
そう思うと後藤は、涙が止まらなかった。
x
by robocop307 | 2012-08-31 13:42 | メルマガ過去ログ

